ロシアによるウクライナ侵攻に世界中から反発が強まっている。写真はカナダ・トロントにあるストリートアートが自由に許された「グラフィティ・アレイ」に登場したプーチン大統領の壁画。背景には弾痕と流れ落ちるウクライナの国旗の色があしらわれている(写真:AP/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 ロシア軍が侵攻し、首都キエフへの総攻撃が近いとされているウクライナ情勢は緊迫の度を増している。国外に脱出した避難民の数は200万人を超え、人道危機への国際社会の懸念が強まっている。

 ロシアとウクライナの停戦交渉やフランス、ドイツ、トルコ、イスラエルなどによる仲介の努力も続いているが、期待されたような成果は生まれていない。ロシアはウクライナの「中立化」、「非軍事化」を、ウクライナはロシア軍の即時撤退を要求し、両者の主張は真っ向から対立している。

 ウクライナは、「ロシアの要求する中立化については議論する余地があるが、領土の割譲は拒否する」と明言している。つまり、中立化の前提として、NATOとロシア双方でウクライナの安全を保障すること、またクリミア併合は認めないということである。この提案について、ロシアが理解することは期待できない。

NATOの介入には限界がある

 では軍事的にウクライナ軍がロシア軍を押し戻すことはできるだろうか。軍事力の差から見て、その期待はできない。

 ならば、ウクライナ軍をNATO軍が支援することは可能か。

 戦況は、ウクライナ軍の激しい抵抗で、ロシア軍の進軍が遅れているが、ウクライナはNATOの加盟国ではないので、NATO諸国が軍事介入する法的根拠がない。そこで、武器援助を行っているわけだが、それにも限界がある。

 ポーランドは、ドイツの米軍基地から自国が保有するミグ29をウクライナに供与し、自らはアメリカから戦闘機を受け取るという提案を行ったが、これを米国防総省は拒否した。