(篠原拓也:ニッセイ基礎研究所主席研究員)
国連安保理の機能不全が顕著に
ロシア軍によるウクライナ侵攻を受けて、欧米をはじめ世界各国で、ロシアに対する制裁の動きが広がっている。
ロシアの要人や銀行の資産凍結、国際的な資金決済網である「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からのロシアの銀行の排除、ロシア航空機に対する自国領空での飛行禁止、ロシア船舶に対する自国港への入港禁止など、さまざまな経済制裁が打ち出されている。
一方、国際連合(国連)では、2月25日に安全保障理事会(安保理)で、ロシアによるウクライナ侵攻を非難し、即時撤退を求める決議案が採決された。この採決は、常任理事国であるロシアが拒否権を発動したため、否決された。
これまでも、世界各地の紛争や軍事行動に対する非難決議案などが、一部の常任理事国の拒否権発動によってたびたび否決されてきた。国連安保理の機能不全が顕著となって久しい。
そこで、国連安保理の議決方式や投票力について、少し考えてみたい。
日本は12回目の非常任理事国に立候補
まず、国連安保理の構成について確認しておこう。
安保理は全部で15カ国からなる。そのうち、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5カ国は常任理事国で改選されない。残り10カ国はそれぞれ2年の任期で毎年半数が改選される非常任理事国だ。じつは、1965年に拡大される前は、非常任理事国の数は6カ国で、理事国の数は全部で11カ国だった。
日本はこれまでに、合計で11期22年間にわたって、非常任理事国を務めてきた。これは非常任理事国としては、他国をおさえて最長の期間となっている。
そして、日本は今年6月に予定されている非常任理事国選挙に立候補している。アジア太平洋地域の選出枠を争っていたモンゴルが立候補を取り下げたため、日本がこの地域の統一候補となった。もし選出されれば、2023~2024年の2年間が12回目の任期となり、最長期間を更新することとなる。