垣間見える狼狽ぶり

 薛氏の日本語によるツイートは、米国や台湾、香港などに関連する発言ではこれまでも「言葉の戦狼外交官」と揶揄されるほどに、過激かつ品格を疑うような表現が目立っていた。ところがこれとは対照的に、自身の任地の日本に対しては、パンダの赤ちゃんの話題や地域文化交流などを前面に打ち出した穏やかな表現に終始することが多かった。

 しかし、今回の発信は、その状況から、日本に対する威嚇・けん制も含まれると解釈される点が際立っており、日本社会のあまりの猛反発に、駐日大使館や本国からの苦言もあったのか、いささか狼狽気味に対応した様子がうかがえる。その結果、釈明ともつかないようなぎこちない、火に油を注ぐ「追いツイート」になってしまったのだろうか。

 薛氏とバランスをとるかのように昨年10月下旬、SNS発信を「『和を以て貴しと為す』との理念」に基づいて行うとし、「友好交流」「互恵協力」を掲げてツイッターのアカウントを開設した東京の孔鉉佑駐日大使が、公の場に長らく姿を見せていないことも、今回の薛氏の右往左往する言動に関連しているのかもしれない。

姿消した孔大使、臨時代理大使はライバル

 孔氏は今年1月以降、番頭格の楊宇公使を「臨時代理大使」として実務にあたらせ、自身は春節(旧正月)などの節目のビデオメッセージ等、映像のみで公に姿を見せるにとどまっている。

 楊氏と薛氏は年次も近く、ともにジャパンデスクのやり手として次期駐日大使ポストを争う関係にあると見られている。大阪から楊氏の背中を追う立場である薛氏の、米国や台湾などに絡む過激なツイートは、戦狼外交を展開する本国からの評価を意識したものだともささやかれているが、今回、自身の任地の日本社会に対しても、直接ゆさぶるかのように受け取られる発言をし、不興を買ったかっこうになってしまった。この“失態”は、臨時代理大使のイスに座るライバル楊氏に対し、薛氏自身の足をすくう口実を与える結果にもなりかねない。