米国やEU、日本の商工会は北京だけでなく上海(写真)のような大都市にも存在する

1.中国進出企業の商会組織、主な活動

 中国に進出している主な日米欧企業はそれぞれ自国企業の団体である中国日本商会(会員企業<北京のみ>589社:2021年4月)、中国米国商会(約1000社)および中国EU商会(約1700社)などに所属している。

 上記3団体は北京に本部を置いているが、北京以外の主要都市にもそれぞれ独立した商会組織がある。

 たとえば日本企業の上海の組織は上海日本商工クラブ(同2216社:2020年12月)、米国企業の上海の組織は上海米国商会(約1300社)といった名称である。

 これらの中で、中国日本商会、中国米国商会および中国EU商会は中国ビジネス環境に関する会員企業の意見などをそれぞれが取りまとめて毎年白書を作成し、中央および地方の中国政府に対して投資環境の改善要望等を提出している。

 また、米国商会とEU商会は会員企業を対象に中国ビジネスに関するアンケート毎年実施し、調査結果を整理して公表している。

 この公表資料は欧米企業の中国市場への取り組み姿勢を理解する上で重要な資料となっている。

 毎年ほぼ同じ質問に対する回答が示されているため、時系列の変化も読み取ることができる。

2.中国政府は商会組織の要望内容を重視

 中国政府は日米欧の主要企業によって構成されている商会組織が発信する情報を重視している。

 前述の中国日本商会の白書は、貿易、投資、競争法、税務・会計、労務、知財、環境、技術標準、物流、政府調達など広範なテーマをカバーしている。

 産業分野別、地域別にも論点を整理し、それぞれの分野について日本企業から中国政府に対する実務的な具体的改善要望を列挙している。

 元々中国米国商会はこうした要望を中国政府に提出し、中央・地方の中国政府に対して代表メンバーが白書の内容を説明し、ビジネス環境の改善要望を続けており、中国政府もその活動を重視していた。

 筆者が北京に駐在していた2000年代後半に中国日本商会も米国商会の活動を参考にして日本企業による白書の作成を開始した。

 中国日本商会の白書も毎年作成・公表を積み重ねるうちに、次第にその個別要望内容を中国政府幹部が注目するようになり、投資環境の改善に役立っている。