1979年2月2日、米国から戻った鄧小平氏は日本に立ち寄り大平正芳首相と会談した(写真:ZUMA Press/アフロ)

1.改革開放に向かう中国への支援

 1972年9月、田中角栄総理と大平正芳外務大臣が訪中し、国交正常化を実現した。

 当時の日本経済は高度成長時代の末期であり、1969年度に実質GDP(国内総生産)成長率が12.0%に達したのが最後の2桁成長だった。

 その後、1971~90年までの20年間は実質成長率の平均が4.5%の安定成長期である。

 1972年は日本経済が新たな時代に移行した直後だった。この20年間に日本は先進国の仲間入りを果たすとともに、社会保障基盤の整備を進めた。

 その直前の1960年代には公害問題が国民の大きな関心事となり、環境保護意識も高まるなど、国民の生活意識が大きく変化した時代だった。

 現在の中国経済も高度成長期の末期を迎え、2017年の第19回党大会以降、従来の量的な経済成長重視の国家目標を転換し、経済社会の質向上を目指すようになった。

 地域間の経済格差は残っているが、中国全体としては国際社会ではすでにほぼ先進国並みに扱われている。

 社会保障制度や公共インフラの整備が進みつつあり、中国国民の環境保護問題に対する国民意識も高まるなど、1970~80年代の日本と重なる点が多い。

 米国との経済摩擦に苦しんでいる状況も当時の日本との共通点である。

 そんな時代背景の中で日中国交正常化は実現し、日中経済交流が進展した。