アフガニスタンで灌漑事業などを支援してきた中村哲医師は2019年12月4日に銃撃されて亡くなった(写真は2008年8月28日、AP/アフロ)

1.タリバンの評価と情報収集

 8月末、日本政府によるアフガニスタンの首都カブールからの脱出作戦が遅れ、現地で日本の活動を支援してくれていたアフガニスタン人などが現地に取り残された。

 これについて様々な問題点が指摘されているが、筆者が重視するポイントは、現地の情報収集力が高ければこうした事態を未然に防ぐことができた可能性が高いということである。

 カブールの日本大使館から外務省の全職員が国外退去する際にも、他国がどのように対応しているかという情報が不足していたため、一部の職員が空港に残って必要な情報収集や邦人および邦人関係者の保護にあたるという選択肢が採用されなかったと指摘されている。

 もし十分な情報が入手できていれば、外務省本省サイドから的確な指示を送ることもできたはずである。

 日本政府は今後のアフガニスタンに対する支援方針も表明しているが、それを有効に実施するには的確な情報収集が不可欠である。

 アフガニスタンの新政権はタリバンが掌握している。日本国内の世論ではタリバン=テロ組織という認識が多数派である。

 これは米国政府やメディアなどがそのような情報を流している影響が大きい。

 しかし、アフガニスタンの情勢に詳しい有識者の見方では、タリバンは必ずしもテロ集団ではない。

 もしテロ集団としての性格が強ければ、もっと暴力的であり、アフガニスタン人からの支持も得にくいはずであると指摘されている。

 しかし、米軍すら予想できなかったほどの速さで、深刻な軍事的な衝突もなく、短期間のうちにカブールを支配した。

 これは、アフガニスタン人からの強い支持がなければ実現しなかったはずである、というのが上記の有識者の見方である。