(川島 博之:ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問)
ウクライナ問題が風雲急を告げている。この問題の背後には、ドイツを中心としたEUが主張する「SDGs」(持続可能な開発目標)を、米国が面白く思っていないことがある。そのことについて語りたい。
ウクライナ危機の直接の原因は、ウクライナがNATOに加盟したがっていることにある。ロシアは、子分だと思っていたウクライナがロシアを敵視するNATOに参加することを容認できない。軍事力を使ってでも阻止したい。そこだけを見ればウクライナ問題は安全保障に関わる純粋な軍事問題である。だが、それだけではない。EUがリードしてSDGs実現に向かう世界の流れに歯止めをかけたいという米国の思惑が微妙に入り込んでいる。
21世紀に入った頃からドイツを中心とするEUは持続可能な社会の実現を声高に主張することによって国際社会をリードしてきた。ガソリン自動車をなくして全てを電気自動車にする流れを作ったのはドイツに他ならない。このような流れに対して、SDGsは自国の国益に結び付かないと考える米国がウクライナ問題を利用して一矢を報いようとしている、という見方も可能である。