次期大統領は韓国の危機的状況にどう向き合うのか

 北朝鮮の問題にしても国内の経済問題にしても、韓国が現在、極めて重大な岐路に差し掛かっているのは間違いない。そのタイミングで行われる大統領選挙だけに、韓国の将来を決定づける極めて重要な選挙になる。

 ところが、韓国は北朝鮮の差し迫った脅威にどのように向き合おうとしているのか、夢を失った国民にどのように向き合おうとしているのか、といった点について、各候補者たちの考えが全く伝わってこない。

 唯一、尹錫悦氏は北朝鮮に対する先制攻撃の能力保有に言及した。先制攻撃能力の保有は最低限必要であるが、北朝鮮の核ミサイルの実戦配備に対抗するための現実的な政策とは言い難い。

 日韓、米韓関係については尹氏も李氏もその主張は原則論が中心である。今後のテレビ討論などを通じて、両者の主張・立場をもう少し鮮明にしてほしい。

 国内経済の問題についても、若者により良い職場を提供し、未来に向けた希望を与えることが今の韓国には何よりも重要だ。同時に不動産政策でも若者が購入できる不動産をいかに提供するのか、真剣に議論してもらいたいものである。

 テレビ討論会は各候補の主張を印象付ける最後の機会となるはずである。いい加減にネガティブキャンペーンから脱して、大統領として何をするか明らかにして、正々堂々と国民の審判に委ねることを各候補が真剣に考えてほしい。

 退任した大統領がほぼ例外なく監獄に送られるような韓国の大統領制は、はっきり言えば明らかに行き詰まりを迎えている。権力を握った者が政敵を打倒することを第一義的に考えている。そうではなく、国民を幸せにする努力を怠らないことを考えてほしい。

 今回の大統領選挙で審判を受ける文政権の実情については、拙書『さまよえる韓国人』をご参照願いたい。