「絶大すぎる」韓国大統領の権力
韓国では、大統領を中心とする行政府、立法府、(議会)、司法府(大法院)が権力を共有し、互いにけん制する建前にはなっている。
しかし、同じ大統領制でも、米国の大統領は高位公職者の任命権を持つが、上院に「任命同意権」も付与されている。一方、韓国では大統領が選んだ首相候補にこそ議会の同意が必要だが、長官であればたとえ国会が聴聞会で拒否しても大統領が任命を強行することが可能だ。実際、文在寅大統領が野党の同意なくして任命した長官(大臣)は30人を超える。
予算も国会の審議を受けるが、国会には予算決算審議能力がないため、事実上形式的な行為になっている。
立法も文在寅氏の政府与党は一昨年の総選挙で6割を超える議席を確保してから、対決法案を事実上立法府の審議を経ずして、提出から数日で可決する事態が頻発している。
司法府も文政権に近い金命洙(キム・ミョンス)大法院長を使って人事刷新を行っており、検察に至っては高位公職者犯罪捜査処を設立して、政府与党に対する捜査権を事実上はく奪している。
このように大統領には強大な権力が与えられているにも関わらず、国民の求める大統領像とはほど遠い候補しかいないのが韓国の実情である。あまりに強すぎる大統領の権限を縮小するための憲法改正も論じられているが、それも大統領が応じる意向がないためこれまで実現していない。
これまでの韓国大統領選挙の流れを見ると、韓国大統領の権限に関する韓国のトップレベルの有識者の懸念はより深刻になっているように思う。