(藤原 修平:在韓ジャーナリスト)
また韓国で日本のことがやかましくなってきた。ちょっと前まで賑々しかった「ノージャパンキャンペーン(日本不買運動)」が下火になったと思ったら、最近は報道番組で、「アベ」という言葉が何かと飛び出てくる。
安倍晋三・元総理大臣のことである。首相を辞任してから1年以上も経っているのに、韓国人はどれだけこの人のことが好きなのかと思ってしまうほどだ。とにかく安倍氏の一挙手一投足が気になっている様子が、報道からうかがわれる。
しかも興味深いことに、菅政権時代よりも今の岸田政権になってからのほうが頻繁に安倍氏のことが話題にのぼるようになった。菅政権は安倍政権の政策をほぼ継承していたから、韓国人にとっては安倍氏が2人現れたような形になって、安倍氏への注目が低下していたということかもしれない。
頻繁に日韓首脳会談に臨んだ安倍氏
韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は、2015年末に日韓間で交わされた慰安婦合意に対して一貫して批判的な政策をとってきた。安倍氏はその文大統領と積極的に対話を続けていたのが印象的だ。2017年5月に文政権が誕生して以降、同年には7月と9月の2回、翌2018年には2月、5月、9月の3回、そして2019年には12月に日韓首脳会談が開かれている。