李在明氏に漂い始めた悲壮感

 さて、再び選挙戦の状況だが、尹錫悦氏を逆転したかに見えた李在明氏が、ここにきて焦りの色を濃くし始めている。

 致命傷になるかと思われていた大庄洞都市開発疑惑については、政府・与党が捜査の手を緩めてくれたし、マスコミの批判をそらすためのメディア対策にも力を入れてきた。

 また李在明氏は、文在寅政権の政策との差別化を図るために、現政権の不動産政策ばかりでなく北朝鮮追従政策まで批判を展開。さらに国民1人当たり年間100万ウォンの支給や、誰でも1000万ウォンまで借り入れられる基本金融を提唱するなどのバラマキ政策を運動の柱としてきた。

 そのポピュリスト的政治スタイルをもっとも体現した政策は、薄毛治療に健康保険を適用するというものだろう。日本人の感覚からすれば呆気にとられるような政策だが、1000万人の薄毛に悩む人がいる韓国では、意外にも好評だったとの声も聞こえている。

 また尹錫悦氏夫人のスキャンダルを中傷するかのように、李在明氏夫妻がサンタ姿でダンスを踊る姿も、映像で公開した。「バラマキ」だの「人気取り」だのという批判を浴びようとも、何が何でも支持をかき集めようというつもりなのかも知れない。

 しかし、選挙まで40日余りに迫った時点で入ってくる情勢調査の報告は、尹錫悦氏に離されつつあるという内容で、さすがに焦りを隠しきれない雰囲気になってきた。

 18日には、李在明氏が、実兄・李ジェソン氏と兄嫁のパク・インボク氏に浴びせた160分の暴言の音声記録が公開された。録音ファイルの大部分はジェソン氏夫妻が録音したものであり、通話内容にはジェソン氏の精神病院強制入院をめぐる対立も含まれている。

 尹錫悦氏夫人の暴言記録も話題となったが、李在明氏の暴言ファイルの影響の方が世間に与えたインパクトは大きかったようだ。このため李在明氏は24日、京畿道で遊説中に、ひざまずき、家族史や兄嫁への暴言について説明し、終始涙ながらに「暴言は過ちであり、人徳が足りなかった」と謝罪した。