今後はテレビ討論が複数回行われるだろう。韓国の大統領選ではそこでの印象が情勢をガラリと変えることもある。再び自体が急展開する可能性もある。
尹錫悦氏、支持急落から急回復へ
今回の大統領選挙は、「最悪」を避けて「次悪」を選ぶ選挙になっているが、それは李在明氏も尹錫悦氏も本人や家族にスキャンダルを抱えており、選挙運動もスキャンダルの暴露合戦主体で進められてきたからだ。
当初は優勢と見られていた尹錫悦氏への支持が一時期、急に落ち込むキッカケとなったのは、尹氏の妻・金建希(キム・ゴンヒ)氏の経歴詐称問題であった。尹錫悦氏は、検事総長時代、曺国(チョ・グク)元法務部長官夫人が子弟の入学不正に関与したと追及し続けていたのに、その一方で自分の妻の経歴詐称は見逃したとして、激しい攻撃対象となった。そして夫人の経歴詐称問題に真摯に向き合わなかったとして所属政党・国民の力の中で批判が高まり、選対の内紛まで招いてしまった。この内紛で李俊錫代表が選対共同委員長を辞任する事態となったことが致命的な逆風を招いた。
逆風にさらされた尹氏と夫人は謝罪会見を行った。また尹氏は選対を解散、再編した。さらに李俊錫氏との関係を修復した。こうしてようやく支持率は回復に向かい始めた。
しかし、修復した李俊錫氏との関係も円満なものになっているとは思えない。支持率の急回復をもたらした陰の要因は、政権交代を望む国民の意思とみるべきなのかも知れない。
ギャラップが1月17、18日に実施した調査では、「政権交代」を望む人が56%、「政権維持」を望む人が36.7%という結果が出た。政権交代を望む声が左翼政権の維持を望む声を圧倒している。同じ調査で、文在寅大統領が「上手くできている」とする意見が41.2%であるのに対し、「上手くできていない」とする意見は54.7%だった。
こうした数字を見ると、今回の選挙の焦点は、「誰を大統領にしたいか」よりも、「文在寅政権に対する審判」にあるのかも知れない。