スティグマを知り、多様性を認められる社会を目指す

――病院でもよく言われる「生活習慣を改善する」は、制限を設けることでもありますね。コロナ禍で「新しい生活様式」と提唱されたのと似ているような気がします。

杉本 糖尿病の当事者は食べることを筆頭として、日常生活に多くの制限があります。コロナ禍で外食ができない、人と会えないなどの制限は多くの人にとってつらい経験だったでしょう。もちろん苦にならない人もいるでしょうが、できない人や苦しむ人のことを一方的に否定しバッシングするのは、多様性を認めないことに繋がりかねません。「生活習慣を改善しなさい」という指示も、多様性を認めないことになっていないでしょうか。

「生活習慣病を死語にしよう」という私たちの目標は、糖尿病を持ちながら生きる人たちの多様性を尊重することです。そして、多様性を認める社会へと進む第一歩になり得る活動だとも考えています。

 知らず知らずのうちにバッシングや加害に加担しているかもしれない、一般の人にも糖尿病当事者が受けている社会的スティグマについて、まずは知ってもらいたい。そしてすっかり定着した生活習慣病という呼称についても、一度立ち止まって考えてみていただければと思います。12月12日(日)の市民公開シンポジウムでは糖尿病当事者の人も、そうでない人も、ぜひ多くの方のご参加をお待ちしています。

(編集部註)公開時のタイトルの一部に正確性を書く記述がありましたので、その後、修正いたしました(2022年5月20日)

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「市民公開シンポジウム:糖尿病患者の“生きづらさ”について考える〜医学、社会学、文化人類学、臨床心理学、そして当事者の立場から〜」
2021年12月12日(日)、10:00〜15:00 オンライン開催
https://peatix.com/event/3051955/view

【杉本正毅氏】
バイオ・サイコ・ソーシャル糖尿病研究所代表、東京衛生アドベンチスト病院糖尿病内科勤務。著書に『医師と栄養士と患者のためのカーボカウンティング実践ガイド』(医薬ジャーナル社、2008)、『糖尿病でもおいしく食べる―専門医による美食の提案』(中外医学社、2009)、『2型糖尿病のためのカーボカウント実践ガイド―食品交換表とカーボカウントの連携促進をめざす』(医薬ジャーナル社、2014)がある。