シュペーラー極小期到来と一致する大航海時代の幕開け
冒頭で、超長期にわたる気候変動について少し述べました。ここではもう少し、最近のことについて論じてみましょう。
9世紀から13世紀にかけては、世界各地で気温が上昇した時期と述べました。おそらく現在と同じくらいの平均気温だったと思われます。ところがその後、地球には「小氷期」と呼ばれる寒冷な時代が訪れていたのです。14世紀初頭から19世紀中頃にかけての北半球の平均気温は、1000〜2000年の平均気温よりもだいたい0.6度低かったようです。
【図1】は、スイスアルプスのアレッチ氷河の規模を表したものです。Little Ice Age(小氷期)に氷河の規模が大きくなっていることがわかっていただけると思います。これが、小氷期の証拠とも言えるのです。
小氷期の中でも、特に寒さが厳しくなった時期は4回あったとされます。1280年頃~1340年頃の「ウォルフ極小期」、1420年頃~1530年頃の「シュペーラー極小期」、1645年~1715年の「マウンダー極小期」、1790~1830年の「ダルトン極小期」です*1。当時の記録などからこれらの時期には太陽の黒点数が減少していたと考えられています。要するに太陽活動が低下していたのです。
*1 『気候文明史――世界史を変えた8万年の攻防』(田家康著、日経ビジネス文庫)参照
その他にも平均気温が下がった要因としては、大規模な火山の噴火によって上空に舞い上がった火山灰が太陽光を遮り地表の温度が下がったこと、海流が変化したことによって亜熱帯地方から高緯度の地域にもたらされていた熱の供給が弱まったことなどが挙げられています。