コロナ禍の長期化によってメンタルを病む人が増えている。それが、うつ病をはじめ、睡眠障害や過敏性腸症候群など様々な体の不調に繋がっている。うつに至るメカニズムや対処法を解説する、医師兼マンガ家の近藤慎太郎氏の連載。最終回の今回は、ずっと持ち続けてきた夢や目標が達成できそうもない時の心のあり方について。
◎近藤慎太郎氏の過去の連載はこちら(https://jbpress.ismedia.jp/search/author/%E8%BF%91%E8%97%A4%20%E6%85%8E%E5%A4%AA%E9%83%8E)をご覧ください。
前回記事「なぜビジネスでは当たり前なのに人生の「プランB」を考えない?(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67223)」で、人生を賭けた試験や仕事が直前に迫っていて、そのプレッシャーに押しつぶされそうになっている時に有用な「Y字路思考法」について解説しました。
現在の生活とは違う、もう一つの魅力的な選択肢を自分に用意してあげることは、精神衛生上とても良いことです。
とはいえ、締め切りのある試練はまだいいのです。学業でも仕事でも、締め切りさえ過ぎてしまえば、結果は否応なく事実としてあり、それを踏まえた上で次の選択をするのは比較的容易です。
一方、対応が難しいのは、締め切りがなく、(2)「人生でこれだけは達成したい目標(または夢)がなかなか叶えられなくて苦しんでいる時」です。この「これだけは達成したい目標」に拘泥すると、自分の人生を損なう可能性があり、非常に厄介です。順を追って解説します。
みなさんには、人生でこれだけは達成した目標、叶えたい夢がありますか?
「起業して、大きくして、バイアウトしたい」
「小説を出版したい」
「最高のパートナーを見つけたい」
「子どもが欲しい」
「海が見える場所にマイホームが欲しい」
「晴耕雨読の暮らしがしたい」
「世界一周したい」
人によって、色々な目標、夢があると思います。「私の人生の目標は何だろう?」「生きている意味は何だろう?」ということを、今まで一度も考えたことがないという人はあまりいないでしょう。
誤解のないように先回りして言うと、「人生には目標がなくてはいけない」と言いたいわけでは全くありません。むしろないならないで、そっちの方がずっとラクで楽しい人生だと思います。人生の目標なんて言われると、必ずやり遂げなくてはいけない難しい宿題を背負わされたように感じてしまいます。
ただ、そうはいっても「人はパンのみにて生きるにあらず」です。最低限の「衣・食・住」についてクリアできたら、やっぱりその先に成し遂げたい目標や夢が湧き出てくるのは、人間の性(さが)みたいなものなのかもしれません。
その人生の目標が良いモチベーションとなって、充実した日々を精力的に送れるようになれば最高です。しかし、誰もがそんな絵に描いたような人生を送れるわけではありません。場合によっては、その目標がなかなか叶えられないことによって、イライラ、鬱々とした日々を送ることになるかもしれません。いわば、人生の目標が「足かせ」となってしまっている状態と言えるでしょう。
では、そんな時はどうすれば良いのでしょうか?ここでもまた、Y字路思考法(の変法)が役に立ちます。
前回に引き続き、恥ずかしながら、私のケースで説明することをお許しください。