(近藤慎太郎:医師兼マンガ家)
前回は、10年連続して減少していた自殺者数が増加に転じたことを解説しました。女性や若年層の増加が目立っており、コロナ禍による外出自粛や生活環境の変化、雇用環境の悪化が影響した恐れがあるとみられています。
確かに世の中には、死にたくなるほど辛いこともあるだろうと思います。八方塞がりになって、やむにやまれず自殺をしたのかもしれません。それを絶対悪だと簡単に決めつけることもできないでしょう。
しかし、それでもなお、自殺を思いとどまって欲しいと思う2つの理由があります。
一つ目の理由は、「自殺をする時点で正常な判断ができなくなっている可能性が高いから」です。順を追って説明します。
自殺に追い込まれてしまった人の原因、背景には何があるでしょうか。一般的には、「経済・生活問題」「勤務問題」「家庭問題」「学校問題」「健康問題」「男女問題」などが挙げられます。
ほとんどのケースでは、単一の問題が原因になるというよりも、これらの問題がいくつか重なり合って、複合的、連鎖的に起きることにより、負荷が増加して自殺に追い込まれる、と考えられています。
つまり原因を一つに峻別することは時に困難なのですが、影響力の大きさであえて順位付けすると、以下のようになります。