前回記事「健康診断ではなかなか見つからないうつ病を判定するには」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65533)はうつ病の診断基準について解説しました。
しかし、実は「診断基準は満たしているけれども、うつ病ではない」ということがあり得ます。「統合失調症」「不安障害」「適応障害」、そして「双極性障害(いわゆる躁うつ病)」など、うつ病と非常に見分けづらい病気がいくつかあるからです。いずれも患者数はかなり多く、身近な病気と言ってもさしつかえありません。
世の中、企業、個人においても、メンタル問題の基礎知識を身につけることの重要性はますます高まっています。それぞれについて特徴、注意点を解説いたします。
まず「統合失調症」です。以前は「精神分裂病」とも呼ばれていました。統合失調症は、幻覚や妄想が生じる疾患です。
例えば、「お前はダメな人間だ」という声がどこからともなく聞こえてきたり、「誰かが自分のことを尾行している」と思いこんだりします。こういった現実には何もないのに起きる症状を「陽性症状」と呼びます。
一方で、感情の表現が乏しくなったり、意欲が低下したりして引きこもり状態になることもあり、こういった活動性が低くなる症状を「陰性症状」と呼びます。陰性症状が強い場合には、うつ病との判別が難しくなります。
統合失調症を「名前は聞いたことがあるけれども、あまり身近ではない病気」と感じる人もいるかもしれません。しかし、厚生労働省の報告では、統合失調症として受診中の人は約80万人いるとされ、頻度としては決して少なくないのです。
患者数が多いのは懸念材料ですが、その一方で、治療薬は進歩しています。難治性の病気という印象があるかもしれませんが、多くの患者さんが完治やそれに近い状態を目指せるようになってきました。
次に「不安障害」です。