イラスト:近藤慎太郎

 コロナ禍の長期化によってメンタルを病む人が増えている。それが、うつ病をはじめ、睡眠障害や過敏性腸症候群など様々な体の不調に繋がっている。うつに至るメカニズムや対処法を解説する、医師兼マンガ家の近藤慎太郎氏の連載。今回は大きな試練に直面した時に役に立つ、「Y字路思考法」について。

◎近藤慎太郎氏の過去の連載はこちら(https://jbpress.ismedia.jp/search/author/%E8%BF%91%E8%97%A4%20%E6%85%8E%E5%A4%AA%E9%83%8E)をご覧ください。

 前回記事(日本人に「石の上にも三年」よりも「逃げ恥」が重要と思う理由)では、ブラック企業、毒親、DVパートナーなど、自分を蝕むような環境からはできるだけ早く逃げ出す必要があると解説しました。

 しかし、そのような環境から逃げ出すことは、日々ギリギリまで追い詰められている人にとって、周囲が思うよりも実は難しいことです。たいていの場合、その組織の価値観に完全に洗脳されていて、「ここで頑張らなくてはいけない」「逃げたと思われたら恥ずかしい」と思い込んでいるからです。

 できるだけ早くその認知のゆがみに気づき、場合によっては周囲が手伝ってあげて、新たな第一歩を踏み出す必要があります。

 認知のゆがみという落とし穴にはまらないためには、人生の調子が悪いと思う時はもちろん、良い時であっても「この仕事を辞めたらどうすればいいだろう?」と常に一段上のレベルから俯瞰するクセを身につけることが大切です。

 それができると、ブラックな環境から逃げ出す時だけでなく、様々なシチュエーションでも役に立ちます。例えば、(1)「人生を賭けた試験や仕事が直前に迫っていて、そのプレッシャーに押しつぶされそうになっている時」、あるいは(2)「人生でこれだけは達成したい目標がなかなか叶えられなくて苦しんでいる時」などです。

 順を追って解説しましょう。