(舛添 要一:国際政治学者)
「徴用工」問題をめぐって日韓関係は数年前から硬直状態が続いているが、2019年末に中国から世界に感染が拡大した新型コロナウイルスの影響で、日本と韓国の人的交流も途絶えてしまい、関係改善は全く進んでいない。
日本では、菅内閣の退陣→自民党総裁選→岸田内閣の誕生→総選挙と、政治の季節が続いており、日韓関係に取り組む余裕もない。また、岸田内閣誕生のために支援したのは安倍晋三元首相であり、安倍政権の対韓強硬姿勢を変更するのは躊躇せざるをえない。
韓国では来年3月に大統領選挙が行われるが、それまでに文在寅政権が日本に対する厳しい姿勢を変えることはない。文在寅大統領の任期は来年5月までであるが、仮に野党への政権交代が起こっても、すぐに大きな変化が生じることは期待できまい。
しかしながら、隣国との関係をこのまま放っておいてよいはずはない。
韓国与党の次期大統領候補も「対日強硬」の文在寅路線
10月26日には、盧泰愚元大統領が88歳で死去した。1990年5月に国賓として来日した際に、天皇陛下は、日本による朝鮮半島の植民地支配について「貴国の人々が味わわれた苦しみを思い、痛惜の念を禁じ得ません」と晩餐会で述べられた。これに対して、盧泰愚大統領は「韓国国民はいつまでも過去に束縛されていることはできません」と応じたのである。
その時から30年以上が経つが、日韓関係はむしろ後退してしまっている。とくに文在寅政権になってから、韓国は「いつまでも過去に束縛されている」状況を続けている。