習近平国家主席と金正恩総書記のツーショット。米中貿易紛争の中、北朝鮮は中国を支持する姿勢を強めている(写真:新華社/アフロ)

 最近になって、北朝鮮が「打米奉中政策」、すなわち米国を殴り、中国にはぴたりと寄り添うことに忙しいようだ。ますます加熱する米中間貿易戦争において、中国を応援し、中国側であることをはっきりと示すための意図的なプロパガンダと言えよう。

 その一例として、北朝鮮の官営媒体である労働新聞や朝鮮中央通信に続き、北朝鮮外務省までもがホームページ上で「打米奉中」に関する記事を次々と掲載している。その中で、一番目についた記事を分析しよう。北朝鮮メディアで報じられた中国の翻訳記事だ。

◎金興光氏の過去の記事はこちら(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%87%91+%E8%88%88%E5%85%89)をご覧ください。

(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

 10日2日、中国の「環球時報」は「朝鮮戦争関連映画の観覧記録突破は今の中米競争に関連している」という見出しで、新しく公開された中国映画『長津湖』が、1日、上映初日のチケット販売額が過去最高を記録したことを伝えた。

 この映画は、1950年代の朝鮮戦争の際に起きた長津湖畔における戦闘で、中国人民志援軍が零下40℃という極寒のもと、強靭な精神で現代的武装装備を備えた米軍とどのように戦ったのかを描いているという。

「環球時報」で紹介された愛国映画『長津湖』を見た中国の人々の反応は、次の通りだ。

 ある映画愛好家は、ネットの掲示板に「中国人民は絶対に米国を恐れない。70年前、米国は朝鮮戦争で勝つことができなかったし、今日の貿易戦争でも勝つことはできない」と書き込んだ。

 軍事専門家のあるテレビコメンテーターも、「映画『長津湖』は、国の主権と安全、発展と利益を守ろうとする覚悟が確かなものであり、いかなる敵との戦いも恐れない中国人の精神を反映している。この映画は、中国が挑発や紛争を起こすことはないが、ひとたび問題が発生すれば、絶対に退かず、挑発した者を撃退するのだということを知らしめる。これは、今日の中米競争と多くの関連性を有している」と評した。

 また、上海復旦大学の研究者は、「中米間の長期的な戦略的競争が続く中、この映画は中国の団結と自尊心を強化するのに役立っている。こういった抗米援朝戦争をテーマにした映画を、さらに多く製作することが必要だ。米国との戦略的競争における中国の不屈の精神は、抗米援朝戦争での長津湖畔戦闘で発揮した精神と同じものだ。今日、中国はより強力な精神力と基盤をもって、挑発を跳ねのけることができるという確信にあふれている」と、自らの見解を表明した。