また(5)を厳密に守れば、SNSやブログで海外ニュースを転載したり引用したりすることもできないし、セルフメディア(自媒体)を顕彰するテンセント報道賞(騰訊新聞奨)も(6)によれば許されない。そもそも民営プラットフォームSNS上に登場し市民権を得始めたセルフメディアの存在自体がダメ、である。

 中国のセルフメディアの多くは現役の国有メディア記者・編集者が運営しており、個人の発信でありながら、共産党の指導に沿ったものである。直接管理下に置かれてなくても、当局の意向に忖度して発信するものが多い。中には元財経副編集長の羅昌平や、新型コロナ禍の武漢で独自調査に乗り出す弁護士の陳秋実や張展、元CCTV記者の李澤華や実業家の方斌のように、当局の意向に忖度しない発信をする者もいる。だが、そういう発信者はたいていアカウントを凍結されるか、ひどい場合は逮捕されている。羅昌平は最近、大ヒット中の愛国プロパガンダ戦争映画「長津湖」を批判したことで「革命烈士侮辱罪」容疑で逮捕された。陳秋実、張展、李澤華、方斌は武漢での取材中に当局に逮捕されている。武漢取材の4人の中で陳秋実、李澤華は釈放されていることが確認されているが、張展は容疑を素直に認めなかったため拷問を受け、今は懲役4年の判決を受けて服役中だ。

習近平が次々に規制強化を打ち出す背景

 なぜ今、習近平政権は、こうした報道メディア産業からの民間企業の徹底排除に踏み切ったのか。

 中国のメディア規制はすでにガチガチに厳しく、ほとんどのメディアは忠実な党の宣伝機関だ。2020年のネガティブリストでは、第5項目の「ルールに反したインターネット関連経営活動の禁止」の中に、非公有資本がインターネットニュースの取材編集に介入してはならない。いかなる組織も外資との合同経営でインターネットニュース情報サービス機構を設立したり運営したりしてはならない」としており、それで十分にネットニュース統制の効果は発揮されている。

 私が想像する理由は、1つには来年秋の党大会を前に、習近平の長期独裁確立に向けた地ならしや、権力闘争が絡んでいるのではないか、ということだ。

 昨年から今年にかけて習近平は次々に規制強化を打ち出している。たとえばアリババ傘下のアントグループのIPO阻止、民営インターネットプラットフォーム企業に対する独禁法違反を理由とした巨額罰金処分、不動産バブル退治を理由にした民営不動産企業の恒大集団の追い込み、広東グレートベイエリア地域の住宅プロジェクトを担っていた花様年集団のデフォルト、エンタメ芸能界産業に対する締め付け強化や人気女優へのバッシングなど、である。こうした動きは、単に経済・社会の矛盾是正のためや、習近平の掲げる共同富裕路線に沿った政策だから、というだけではない気がする。

 米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」が、アントグループ上場阻止の本当の理由は、習近平にとっての政敵である江沢民や賈慶林につながる資本が巧妙に入っているからだという党内筋の話をもとに報じていた。