同じような観点からみれば、今、デフォルト危機に直面している大民営不動産企業の恒大の創業者の許家印は、かつての江沢民の側近で胡錦涛政権時代の国家副主席を務め、習近平の政敵とみなされている曽慶紅ともきわめて近い関係にある。その結びつきは曽慶紅の息子の曽偉に香港の豪邸を貸与するほどだ。

 また許家印は、2017年に失踪した明天ホールディングス創業者の蕭建華とも昵懇(じっこん)だった。蕭建華は曽慶紅らの「ホワイトグローブ」(資金洗浄や資金移転などの違法行為を正当な業務を装って代行する企業家の総称)であったため、習近平が秘密裏に逮捕していると信じられている。

 恒大問題に連動する形でデフォルトし国家接収されそうな民営不動産企業の花様年は、曽慶紅の姪である曽宝宝が創業。花様年が香港で上場するときは許家印の資金力が支えとなった。

 またエンタメ芸能界は曽慶紅の弟、曽慶淮が文化部官僚時代に掌握し、習近平の妻の元軍属歌手の彭麗媛が主導権を取り戻すまで曽慶紅ファミリーが牛耳っていた。1990年代から活躍し始めた女優の趙薇(ヴィッキー・チャオ)はアリババとの資金関係で圧力を受けていると思われているが、曽慶紅ファミリーとも比較的近しい関係にある。

 習近平のエコの理想を掲げた双カーボン政策(2030年までにカーボンピークアウト、2060年までにカーボンニュートラルを実現)も、石油などの化石エネルギー産業、ガソリンを使う自動車産業が曽慶紅閥や上海閥の利権に関わる産業だということで弱体化させようという狙いもあるかもしれない。

政敵となった王岐山

 なんでも権力闘争の視点から解釈するのはチャイナウォッチャーの悪い癖ではあるが、今回のメディア産業からの民間企業排除方針についても、こうした権力闘争の要素が読み取れそうな気がする。

 ターゲットにされているのは、おそらく第一財経や財新などのいくつかの媒体、そして民営インターネットプラットフォーム企業のニュースアプリやSNS上の世論誘導・形成機能ではないか。個々人が運営するセルフメディア退治は、革命烈士侮辱罪や社会擾乱罪、挑発罪といった既存の法律の乱発と見せしめでいくらでも刈り取れる。

 とすると、狙いの1つはアリババのメディア関連資産で、実際すでに党中央当局からの圧力で財新株は売却された。第一財経や財新伝媒にアリババが投資した当初、世間はアリババメディア帝国ができると予測したものだった。アリババに江沢民系利権が絡んでいるという話はウォール・ストリート・ジャーナルが報じた通り。