「人生は素晴らしい冒険。寄り道しなきゃ」
その頃、大きな出会いが彼女に訪れる。哲学者で作家、新聞記者、政治家でもあったアトス・ヴィルタネン。どこか寂しそうで、人生に達観している印象を受ける彼はスナフキンのモデルとされており、劇中でも帽子が印象的に使われている。彼の新聞にムーミンの連載を依頼するなど、公私ともにトーベの協力者である。
トーベとの出会いは1943年、彼が開いた政治家、芸術家や作家たちの集まるパーティーでのことだった。彼には妻がいたが、妻にはボーイフレンドがいた。結婚さえすれば、後は何をしてもいい、むしろ年頃なのに結婚しない方がとがめられた時代。
パーティーでアトスを見初めたトーベは自分から声をかける。「サウナに入る?」 戸惑うアトスにトーベは自ら服を脱ぎ始める。そして、「人生は素晴らしい冒険。寄り道しなきゃ」と自分から彼を誘うのだった。
当時の風潮なら、不倫より、女性から声をかけることの方が大胆とされたかもしれない。男性だから、こうあるべき。女性はこうしなくてはならない。でも、トーベはお構いなし。彼女のなかに男女の垣根がまず、なかった。