野田氏は“子どもへの投資”を主張しており、それ自体は将来の生産性の向上に貢献するが、足元の生産性の向上をどうするのか、アフターコロナの構造変化への対応については主張が不明確である。

 三氏と比較すると、河野氏がもっとも改革に前向きであり、デジタル化の現実も分かっていると考えられるが、しかし河野氏が提示する改革項目で本当に日本経済の生産性を高められ、かつアフターコロナの構造変化に対応できるのかと考えると、まだまだ不十分と言わざるを得ない。

総裁選での骨太の政策論争と“第三臨調”の設置が必要

 歴史を振り返ると、1961年に第一臨調が、そして1981年に第二臨調(土光臨調)が政府内に設置され、それぞれの時代にこれから日本が目指すべき国家像が議論され、その実現のために必要な大規模な改革が決定・実行された。そして2001年には、臨調こそ設置されなかったが小泉政権で大改革が始まった。

 つまり、これまでは20年ごとの節目に日本の目指すべき国家像が再定義されて大きな改革が実行されてきたのである。

 今年は前回からちょうど20年後の節目の年に当たる。だからこそ、総裁選ではもっと骨太な改革の議論が行われるべきだし、総裁選の勝者は次の総理に就任したらすぐに第三臨調を設置して改革の議論を始めるべきである。政府の経済財政諮問会議が毎年策定する“骨太の方針”は、今やすっかり霞が関の官僚がやりたい政策を羅列するだけの“骨細の方針”となってしまった。官僚の堕落はしょうがないとして、政治までもがそれに付き合う必要はない。

 残り数日の総裁選での議論が骨太なものになるか、そして自民党の議員や党員がどういう基準で判断して誰に投票するかは、自民党の“底力”を示せるか、または“底の浅さ”を露呈することになるかの試金石となるのではないか。