(英エコノミスト誌 2021年9月18日号)

内外を問わず、中国共産党の一党支配に脅威の芽となりそうな企業に鉄鎚が下され始めた

 外国企業が中国共産党からのたかりに耐えるというのは、今に始まったことではない。

 国民党と共産党が内戦を繰り広げた革命の時代までさかのぼってみても、勝利を収めた毛沢東の軍隊が、ボルシェビキがロシアで行ったような外国人所有資産の没収を直接手がけることはなかった。

 その代わり、この軍隊は非常に重い税と罰金を科して所有者を痛めつけ、その負担があまりに大きかったため、外国企業は最終的に資産を無償で手放していった。

 イスラエルの学者アーロン・シャイ氏が発掘した印象的な事例によれば、とある英国人実業家は1954年、「倉庫が建ち並ぶ大きな区画から鉛筆や紙まで」ありとあらゆるものを共産党に譲ると公言した。

 だがそれでも、交渉相手の共産党員ホー氏は、この実業家に言わせれば「解放前の時代の商店主のように」その譲渡価格を値切り続けたそうだ。

 その後、多国籍企業は再び中国に集まってきたが、中国政府のあら探しは続き、その対象も技術移転からどの程度自由に投資できるかに至るまで、あらゆる面に及んだ。

 大きな改善もなされてはいる。しかし些細なことへの政府のこだわりは、ある米国人の表現を借りれば、企業は「ズボンをはけなくなるほど大きくなる(分不相応の意)」べきではないことを絶えず思い出させてくれる。

 西側企業が中国で事業を営めるのは当局が黙認しているからであり、いつの日かその座を明け渡すように求められる恐れがあるのだ。

国内企業に向けられた統制強化の矛先

 そのため、習近平国家主席が新しいタイプの経済を打ち立てようとする最近の取り組みで、西側企業ではなく中国の企業がもっぱら犠牲になっているのを見て、ほくそ笑んだ向きもあるかもしれない。

 この1週間だけでも、中国政府は大手ハイテク企業のアリババ集団と騰訊控股(テンセント)の間の垣根を低くする手を打っているし、英フィナンシャル・タイムズ紙によれば、アリババの姉妹会社であるアント・グループには同社所有の金融スーパーアプリ「支付宝(アリペイ)」の分割を命じた。

 中国のハイテク系「オリガルヒ」を去勢しようとする習氏の取り組みと、欧米の政府が西側の巨大ハイテク企業に襲いかかる様子とを比較し、習氏の方が優れているかのように描く人すら出てきている。

 しかし、この強引さは尋常でないほど恐ろしい。気まぐれさについても同じことが言える。