(英エコノミスト誌 2021年9月11日号)

アフガニスタンからの撤退は失敗だったが、その失敗を次に生かすことが米国のリーダーには求められている

 今から20年前、米国は9月11日のテロ攻撃後の世界秩序の建て直しに乗り出した。今日、米国の外交政策はカブール空港の滑走路にうち捨てられたと結論づけるのは容易だ。

 ジョー・バイデン大統領は、アフガニスタンからの撤退の本質は遠く離れた土地で戦う「時代を終わらせる」ことにあると述べているが、この決断に同盟国は困惑し、敵対勢力は大喜びだ。

 米国民のほとんどはこの事態に辟易しており、ざっと3分の2が、この戦争には戦う価値がなかったと話している。

 しかし、国民の疲弊感や無関心にそのまま従っていては、米国が今後世界で果たすべき役割について判断を誤ることになる。

 米国は今でも非常に強い力を持つ。「9.11」後の時代から正しい教訓を引き出すことができれば、21世紀に向けて戦略を練り直すことは可能だ。

米国の一極支配の時代

 米国本土で3000人が殺害されたことにより、米国の「一極支配」を際立たせる反応が沸き起こった。しばらくの間、この国は向かうところ敵なしの大国に見えた。

 ジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)は、世界は米国の味方に付くか敵に付くかのどちらかだと言い切った。

 北大西洋条約機構(NATO)は、世界貿易センタービルへの攻撃は全加盟国への攻撃だと述べた。

 ロシアのウラジミール・プーチン氏は軍事協力を約束し、米国のコンドリーザ・ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当、当時)は、これをもって冷戦が本当に終わったと語った。

 米国主導の部隊がタリバンをあっさり蹴散らしたことは、新しい種類の軽度な戦争になることの予兆に思えた。

 9月11日から数えて63日後に首都カブールは陥落した。

 その後、持続性のある成果が得られている。テロ対策の取り組みは進歩している。

 ウサマ・ビンラディンは死亡し、多少なりとも9.11と比較できるような米国への攻撃は成功していない。マンハッタン島南部は立派に再建された。