(英エコノミスト誌 2021年8月21日号)

新型コロナウイルスとの戦いは中国国内の景気減速に拍車をかけ、世界的な供給混乱も招いている。
中国の東の海岸に面する寧波の港は、8世紀の唐の時代から交易に利用されている。1842年に第1次アヘン戦争が終わった時には、ほかの4つの港とともに外国の商人に無理やり開放させられた。
2015年に隣接する舟山港と合併した港は、今年の上半期に世界のどの港よりも多く貨物を取り扱った。
最近は80人の学生グループが3日かけて自由貿易地区(FTZ)を見て回り、寧波市当局の言葉を借りると、この港の「ハードコア(核心的)」パワーに感嘆した。
だが8月11日、この港で最も混雑しているコンテナ・ターミナルの1つが突然業務を停止した。
到着した船の乗組員と接触した34歳の港湾作業員が、中国シノバック製のワクチンを2度接種していたにもかかわらず、新型コロナウイルスのデルタ株に感染していると診断されたためだ。
感染したのはこの作業員1人だけだったが、政府はそれだけで港全体の業務を停止させ、感染者の濃厚接触者254人(加えて、濃厚接触者に接触していた396人)を隔離した。
容赦ない感染防止策
この話は3つの点で興味深い。
まず、デルタ株を水際で食い止めることがいかに難しいかが改めて示されている。
第2に、それにもかかわらず中国が懸命に食い止めようとしていることが浮き彫りになる。
そして第3に、その影響が世界各地に広く及びそうなことがうかがえる。
このターミナルの閉鎖に先立ち、今年5月には中国南部の塩田港で同様な業務停止があった(先月には台風「インファ」の接近による混乱も起きていた)。
海運運賃デジタル市場のフレイトスによれば、中国国内から米国内の最終目的地まで貨物を船で送る場合、昨年8月には47日かかったが、今では約70日かかる。
輸送の遅れや将来の港湾閉鎖の恐れなどにより、西側諸国のクリスマス商戦にさえ乱れが出る恐れもあると一部の専門家は懸念している。
今回の港湾作業員の感染は、7月20日に南京空港で最初に見つかったアウトブレイク(感染者の集団発生)とつながっている。
このアウトブレイクは、8月10日には10あまりの省に広がっていた。