(英エコノミスト誌 2024年7月13日号)

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が次の米大統領になってほしいと願っているのは、ひょっとしたら中国かもしれない(2022年3月8日撮影、写真:ロイター/アフロ)

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事を民主党候補に推す声も上がっている。

 中国政府の要人は、世界は「民主主義対独裁主義の戦い」に臨んでいるというジョー・バイデン米国大統領の見解を拒絶している。

 彼らに言わせれば、これは冷戦時代の危険な表現だ。

 だが、実はその彼ら自身も手強い闘士で、西側民主主義の欠点についての不安を国内外にまき散らすことにますます熱心になっている。

 米国大統領選挙で、それも特に6月27日に行われたバイデン氏とドナルド・トランプ氏との公開討論会であらわになった弱点は、中国側の見解を補強する材料になるかもしれない。

 ただし、中国共産党のシャーデンフロイデ(他人の不幸を喜ぶこと)には不安も入り混じっている。

バイデンvsトランプの討論会に冷笑

 両氏の公開討論会が行われている間は眠っていたと言われるロシアのウラジーミル・プーチン大統領とは違い(討論会が始まった時、モスクワは午前4時だった)、習近平国家主席は北京で中国の外交政策について演説するところだった(北京は午前9時だった)。

 困惑した米大統領が曖昧な表現でのらりくらりと真実を避けていくライバルに苦戦している時、習氏はよどみなく――原稿を堂々と読み上げて――話し続けた。

 公開討論会どころか米国にさえ言及しなかったが、中国の台頭に対する米国の懸念を一蹴してみせた。「中国の力が強くなることは、世界平和の可能性を常に高める」と述べた。

 中国のネチズンはバイデン氏とトランプ氏の対決をすかさず笑いの種にした。

 バイデン氏がまごついたり口ごもったりしている動画は、あっという間に中国のソーシャルメディアで拡散された。

 X(旧ツイッター)に似たプラットフォーム「微博(ウェイボー)」には「一方は『頭のおかしな重罪犯』で、他方は『居眠り病のお年寄り』」と書き込んだ人がいた。

 別の投稿には「近々棺桶に入る2人が殴り合っている」と書かれていた。「西側の政治は本当に破綻している。もう誰も残ってない」。

 公開討論会にタグ付けされた微博への投稿の閲覧数は1億回を優に超え、何万件ものコメントが付いた。

 国営メディアもこの流れに乗った。

 ある有力ジャーナリストが「これは完全に米国の内政であり中国には何の関係もないが、米国の選挙はあの国に実に多くの問題があることをあぶり出した」と論じた記事をオンラインで公開したところ、複数のニュースサイトに再投稿された。

 国営通信社の新華社は、この公開討論会は「『米国民主主義』の混乱と分断を改めて世界に暴露したにすぎない」と論評した。