(英エコノミスト誌 2021年9月4日号)

巨大企業2社の無謀な行動は、中国の債券市場がまだ発達していないことを示している。
中国は何年も前から、企業の不良債権を処理しようとしてきた。
新型コロナウイルスのパンデミックの前に多少の進展を遂げていたが、この仕事は往々にして果てしないように見え、中国の長期的な経済発展にとって、そして中国の株式と債券へのエクスポージャー(投資残高)があるグローバルな投資家にとって、今なお極めて重大な問題になっている。
政府は、市場の規律を強めるとともに、金融システムを破壊することなく企業をデフォルト(債務不履行)させる透明性の高いプロセスを確立したいと主張している。
今、こうした主張の真価が、国営金融コングロマリット(複合企業)の中国華融資産管理と、中国最大の不動産会社、恒大集団の危機によって試されている。
両社は合計で5400億ドル(約60兆円)規模の負債を抱えており、返済に苦労する。
その両社の対照的な運命は、中国のアプローチがまだ、市場原理と法の支配ではなく、政治とその場しのぎの対応によって決まることを物語っている。
膨れ上がる債務
債務の水準はあごが外れそうになるほど大きい。
民間の非金融セクターは2020年末時点で、中国の国内総生産(GDP)の222%に相当する債務を抱えていた。その大半は、企業の債務だ。
これに対し、米国の民間非金融セクターの債務はGDP比164%だ。不動産市場と銀行間市場では、よくストレスが噴き出す。
中国政府は裁判所に対し、米国が連邦破産法11条(チャプター11)を使ってやるように、債務再編でもっと大きな役割を担うよう迫ってきた。
だが中国では、債務を繰り延べして、問題がないふりをする「エクステンド・アンド・プリテンド」の文化が根深い。
債券のデフォルト率は人為的に低く、今年は1%程度にとどまると見られている。昨年の世界的な社債デフォルト率の2.7%前後を大きく下回る計算だ。
中国の国有銀行は「習近平思想」への敬意を喜んで表明するかもしれないが、銀行の不良債権について認めることはためらうのだ。