(英エコノミスト誌 2021年8月28日号)

海外に脱出しようとごった返すアフガニスタンの首都カブールの空港で8月26日、イスラム国による自爆テロが発生、多数の死傷者が出た(白煙を上げるカブール空港、写真:AP/アフロ)

最大の危険は貧しく、不安定で、反政府勢力がすでに領土を支配している国にある。

 イエメンでは花火が打ち上げられ、ソマリアではお菓子が配られた。シリアでは、ジハード(聖戦)を通じて「犯罪者の政治体制を倒す方法の生きた手本」を見せたことに対し、タリバンへの称賛の声が上がった。

 イスラム主義勢力タリバンがアフガニスタンの首都カブールを陥落させたとの知らせに、世界中のジハード主義者が歓喜した。

 聖なる戦士たちが低予算にもかかわらず、意志の力と忍耐、そして狡猾さを駆使して米国を打ち負かし、中規模の国を支配下に置いたのだ。

 異教徒を追い出したい、宗教と関係しない世俗国家を転覆させたいと願っているイスラム教徒にとって、この勝利は神がその願いを是認してくれている証拠だった。

 この出来事の波及効果は幅広く、かつ遠方にまで及ぶ可能性がある。

アフガニスタンの大混乱

 ジョー・バイデン米大統領は今後数日のうちに、カブールの空港で自ら作り出した混乱を収拾させなければならない。

 空港では大勢の人々が脱出を希望している。バイデン政権にとって、まさに危険な局面だ。

 長期的には、米国の屈辱がジハード主義にもたらした勢いに世界全体で対処しなければならない。

 最大のリスクは、テロリストが2001年9月11日の時のようにアフガニスタンを西側諸国攻撃の基地として利用することではない。

 富める国々のセキュリティーは向上しており、今ではあのような攻撃は困難だ。

 それに、タリバンは諸外国からの承認と援助を渇望しており、世界を股にかけて活動するテロリストを養成する大規模な訓練キャンプなど容認しないだろう。

 確かに、外国出身のスンニ派ジハード主義者をもてなさなければならないという義務感に駆られる人もいる。

 一部はパキスタンにいる仲間の戦闘集団を支援し、あの核保有国がさらに不安定になるだろう。

 だが、アフガニスタンの国外では、最大の波及効果は心理的なものになる。

 例えば、タリバンの勝利は諸外国のジハード主義者を鼓舞し、戦闘集団への新兵加入を促すことになる。