(英エコノミスト誌 2021年8月28日号)

長年、ナショナリストの怒りは中国の役に立つことが多かったが、状況は変わりつつあるのかもしれない。
中国はアンガーマネジメントの問題を抱えている。少なくとも、民主主義を標榜する西側の中小国を相手にする時は、怒りを抑えられない。
バルト海に面した欧州連合(EU)加盟国リトアニアの運命がその好例だ。
リトアニアは今、中国に懲らしめられている。
中国が自国の領土だと主張している民主主義の島・台湾が、リトアニアの首都ビリニュスに「台湾代表処」という事務所を設けることに同意したためだ。
中国はこれを自国の国家主権に対する侮辱と呼び、リトアニア駐在の申知非大使を召還したうえ、リトアニア側にも中国駐在のディアナ・ミッケビチェネ大使を呼び戻すよう要求した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、夏休みを終えて北京に戻ったばかりのミッケビチェネ大使に帰国の運命を伝えたのは中国だった。
大使は北京の住まいで3週間の厳しい隔離に耐え、隔離明けの8月31日になったら早々に飛行機で帰らねばならない。
国営メディアは、中国がリトアニアに直行する貨物列車の運行を近々停止し、その後も、人口280万人のこの小国との経済関係を断ち切る可能性があることを示唆している。
(リトアニアの農家は中国に牛乳を売る長年の夢を忘れるべきだ、とほのめかされている)
北京に駐在する他国の外交官たちが怯えながら詳述しているところによれば、リトアニア大使館には脅迫電話がひっきりなしにかかってきている。
その多くは、大使館で働く中国人職員を標的にしたものだという。