アフガニスタンのカブールから大使館員を避難させる米国(提供:Senior Airman Noah Coger/U.S. Air Force/ロイター/アフロ)

(山中 俊之:著述家/芸術文化観光専門職大学教授)

 1カ月前ここまで急展開すると思っていた人はごくわずかであろう。世界を震撼させたアフガニスタンにおけるタリバンのカブール制圧である。

 筆者は、アフガニスタンには友人知人が多い。カブール制圧の前後から、身の危険を感じた友人知人から私のフェイスブックに悲鳴に近いメッセージが届くようになった。「自宅から出ることができない」「インターネットが遮断される恐れがある」など、深刻な内容が多い。

 筆者として動くことができることはしたものの、現時点では手を差し伸べることができず忸怩たる思いだ。

 女性の人権抑圧、過度なイスラム色のある政策、ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんの狙撃──。20年前のような恐怖政治の再現に世界が恐れを抱いている。

 今後のアフガニスタン情勢はどうなっていくのかについて本稿で検討していくことにしたい。

 今後の情勢を考える上で重要な点を2点指摘したい。

 第一に、タリバンがアフガニスタンで勢力を拡大するきっかけには、初期の段階で米国の支援があったことだ。この歴史的事実に、世界と米国、中東の関係を考える重要なヒントが眠っている。後述するように米国の軍事的な肩入れはほとんど米国にとってマイナスの結果しか生んでいない。

 現在のアフガニスタンの混乱の源流は、1979年のソ連のアフガニスタン侵攻にある。緩衝国家アフガニスタンにおいて、イスラム色の強い政治勢力が伸長してソ連の中央アジア諸国に飛び火することをソ連は恐れた。

旧ソ連の侵攻に対抗するアフガンのムスリム兵。旧ソ連のアフガン侵攻は結果的に失敗に終わった(写真:AP/アフロ)