まもなく「事件性なし」と判断された優空くんの遺体は、司法解剖を受けることなくそのまま遺族に返された。その際、高知県警の警察官は、CT撮影の結果をもとに、岡林さんにこう説明したという。

「肺の中も、胃の中も、ちゃぷちゃぷしています。司法解剖しても無駄ですよ」

 そして4日後、優空くんは荼毘に付されたのだ。

優空君が亡くなった下田川の現場で手を合わせる岡林さん(遺族提供)

溺死体の死因究明にはプランクトン検査が不可欠なのに

『司法解剖をしても無駄ですよ・・・』

 高知県警が発したこの言葉を、法医学者はどう受け止めるのか。

 岩手医科大学法医学教室の出羽厚二前教授は、CTだけに頼った死因究明の危険性について、こう指摘する。

「司法解剖は“無駄”ではありません。水死の場合、まず他の病変がなかった否かの確認をしなければなりません。つまり、解剖をして、その上でプランクトン(珪藻類)の検査をする必要があるのです。『(事件性も)なにもなかった』というのは、きちんと検査をした人しか言えないはずです」