(篠原 信:農業研究者)
政治家や官僚は、いつでもマスコミの格好の攻撃対象。
この二者はいくら批判しても構わない。彼らは権力者だから。批判にさらされなければ必ず腐敗するから。こんなイメージが、日本では共有されているように思う。
私自身は、政治家や官僚をさほど悪い人たちだと思っていない。生来の悪人なんて、そうそういないと考えている。楽観的すぎると叱られるかもしれないけれど。
実際に政治家や官僚たちと接すると「やっぱり同じ人間だな」と思う。彼らも、人々を幸せにしたい、笑顔にしたいと願って日々働いている。自分が担当する権能をそのために行使したいと考えているのが伝わってくる。
ところが、意外なほどに彼らは現場に疎かったりする。大きな声の陳情は耳に入ってくるけれど、声なき声は彼らには届かない。陳情≒有権者の声と勘違いしてしまうようだ。特定の声の主に対して便宜を図った結果、それが「利権まみれ」と批判されることになったりもする。
陳情は誰の声?
では、政治が「現場」を知るにはどうすればいいのだろう。
職場やくらしの最前線で頑張っている人は、目の前の状況を何とかすることで常に精一杯。慌ただしい毎日に忙殺されていては、声を上げたり、行動に移したりするゆとりはない。
ましてや、政治家に何かを頼みに行くというのは、自分の利益だけを考えた、なんだか後ろ暗いことをしているようで、ためらわれる。わざわざ政治家や官僚に訴えようとは思わない。