6月21日、ジャカルタの集団ワクチン接種会場で、シノバック社製ワクチンのバイアルを示す医療従事者(写真:AP/アフロ)

 日本では、7月23日から開催される東京オリンピックの主要会場での無観客が決まるなど、コロナ感染拡大が止まらない事態になっているが、東南アジアでの感染拡大ペースはそれ以上になっている。東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する各国では、一部を除いて感染者や感染死者が急激に増加しており、極めて深刻な状況に陥っている。

 特にASEAN域内最大、世界第4位の人口約2億7000万人を擁するインドネシアでは、5月にイスラム教の断食明け大祭で多くの国民が故郷に帰省してまた都市部に戻るという恒例の「民族大移動」が、政府や州政府の「帰省制限」にも関わらず大々的に行われ、その結果、6月から感染者、感染死者が激増した。

 こうした中、国民をさらに不安に陥れるニュースが報じられている。治療にあたる医療関係者の感染死が相次いでいるというのだ。しかも、亡くなった医療関係者の多くは、「優先接種」で中国製ワクチンの接種を受けていたという。そのため中国製ワクチンに対する不信感が高まっているのだが、さらに最近、衝撃的なニュースが伝えられた。中国製ワクチンの臨床試験を担当していた責任者が新型コロナに感染し、死亡したのだという――。

感染拡大一途のインドネシア

 7月9日現在、インドンシアのコロナ感染者は245万5912人、これまでの感染死者は6万4631人と、人口による母数が多いこともあるが、ASEANでは断トツの数字となっている。一日の新規感染者数も6月末には2万人台になり、7月に入ると3万人以上を記録。一日の感染死者も1000人前後を記録し続けるという極めて深刻な事態に直面している。