韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の東京五輪開幕式への出席をめぐって、日韓両国政府の駆け引きが熾烈を極めている。訪日の前提条件として、日韓首脳会談を掲げつつ、「成果がないなら首脳会談は行わない」という韓国大統領府の立場と、「従来の立場から一歩も退かない」という日本政府の立場とが厳しく対立しているのだ。
「文大統領訪日プラン」、第一報は産経新聞
7月6日、まず日本の「産経新聞」が、「韓国政府が日本側に対し、23日に開会式を迎える東京五輪に合わせて文在寅大統領が訪日する意向を伝えていた」と報じると、すぐさま韓国大統領府は「推測性の記事には立場を出さない」と述べつつも、「何も決まったことはない」と含みを持たせた。ただ、「何も決まったことはない」というコメントは、「協議中だ」との意味と受け止められ、韓国メディアは一斉に「文大統領訪日」の可能性は高いと判断した。
実際に7日には、韓国の朴秀賢(パク・スヒョン)大統領府・国民疎通首席がラジオに出演して、「韓日間の首脳会談が開かれたらいいと思うし、その結果で韓日間の懸案に関する葛藤(対立)が解決できる成果もあればいいだろう」と、日韓首脳会談に対する積極的な立場を示す。すると翌8日に日本の菅義偉首相が「(文大統領が)訪日する場合、外交上丁寧に対応するというのは当然のこと」と答え、文大統領と菅首相との首脳会談は事実上確定したかのように映った。
しかし、その後、日本メディアから出てきたのは首脳会談に否定的な報道だった。
日本政府当局者の話として報じられたのは次のような談話だ。
「(文大統領を含む各国の主要関係者は菅首相と)一人当たり原則として15分程度会談することになるだろう」
「歴史問題で譲歩してまで文大統領に来てもらいたいとは思わない」
「(首脳会談が)何かを協議したり、交渉したりする席にはならない」