略称は〈土地規制法〉?
本来、法律の名称(略称)は法の本質を端的に表すもので、重要なメッセージをわかりやすく発している。新法は公式ベースでは〈重要土地等調査法〉とされ、内閣官房のサイト(土地調査検討室)に掲げられている。
ところがマスコミ各社はそれぞれが社の個性でもって、独自に命名するに至り、結果、新法の略称はバラバラになっている。筆者はこれまで新法を〈外資の土地買収調査法〉と呼んできたが、一連の騒ぎの中でどれを採用すべきか正直迷っている。
最も短い略称は〈土地規制法〉だ。
朝日新聞・琉球新報・沖縄タイムスによるもので、三社とも3月以降は呼び方を揃えた。ブレずに使い続けたせいか、国会審議の終盤、6月以降はこの命名が主流になった感がある。ただこの略称、私権がズカズカと制限されそうなイメージを抱かせる。何だか法案そのものに反対したくなってくる。
NHKは〈土地利用規制法〉で、毎日新聞は〈重要土地規制法〉。
日経新聞は経済安保の観点から本テーマの報道では他社を凌ぎ、先頭を走っていたが、国会終盤での略称は〈重要土地利用規制法〉。法律の性格をほぼ表している。
読売新聞は〈重要土地等規制法〉で、政府の表現に近い。
意外だったのは北海道新聞が使う〈重要土地法〉だ。ニュートラルな感じを醸し出す呼び方で、左派に偏らず、好感がもてる略称である。でも社説で使っていたのは〈土地規制法〉。本音はやはり新法には反対なのかもしれない。
産経新聞は新法の制定を後押しすべく、昨年来、先行して外資買収の関連記事を連発してきた。年明け以降も大きく紙面を割き、新法を〈安保上重要な土地調査法〉〈外資土地規制法〉と呼んだ。ところが他紙が頻繁に取り上げはじめると迎合したのか、〈土地利用規制法〉や〈土地規制法〉に変えた。産経トーンが薄れてしまったようで寂しい。編集方針まで変わってしまったのか心配だ。
ロイターの場合は書き手ごとに異なった。〈土地規制法〉と〈重要土地調査法〉だ。英訳したとき、混乱しなかったろうか。