また、この日は井出さんの裁判を支援する30名を超える原告弁護団の中から、聴覚障害のある2名の弁護士が手話などを使い、自身の体験も踏まえながらそれぞれに意見陳述を行いました。

 父親の努さん(48)は振り返ります。

「裁判では、聴覚障害のある弁護士さんたちがはっきりとこう言ってくださいました。まだ11歳だった安優香には、将来、なりたい職業を何でも選び、目指すことのできる未来があった。そして、被告らの主張は偏見に基づくものとしか考えられず、容認できるものではない、と・・・。何より、私が驚いたのは、聴覚障害があっても、手話通訳のほか、新しい機器やアプリ等を使い、法廷で弁護士として問題なくコミュニケーションをとっておられたことです。その姿を拝見したとき、時代は確実に変わってきているのだということを痛感しました」

最後の誕生日(11歳)にお父さんと(井出さん提供)

被告側の任意保険会社はどう考えるのか

 民事裁判での「被告」は、あくまでも加害者と加害者を雇用していた会社の代表です。しかし、交通事故裁判の場合、現実には、加害者側が加入している任意保険会社の考え方が前面に出てきます。つまり、井出さんが闘っているのは、事実上、保険会社であると言っても過言ではありません。

 被告側の任意保険会社は三井住友海上とのことなので、筆者は「障害者における逸失利益の減額」の主張について、同社が一般論としてどのように考えているのか質問してみましたが、三井住友海上(広報部)の回答は以下の通りでした。

「お客さま(被告)にかかわる個別のご契約につきましては、守秘義務がございますので、回答は差し控えさせていただきます。係争事案は、個別の事情に応じて法廷でご判断されるものでございますので、法廷を尊重する立場から、一般論の回答を差し控えさせていただきます」

 聴力や視覚を失っていても、社会に出て専門職に就き、活躍している人は無数に存在します。第7回の法廷では、まさにそのことが、弁護士となった当事者の陳述で裏付けられました。

 署名の注意点については、支援者の方が手話動画(字幕付き)を作成されていますので、ぜひ参考にしてください。

【署名の注意点と書名の目的】
https://www.instagram.com/tv/CPqOGamjiNx/
http://daicyokyo.jp/info/ikuno.html

 署名活動は6月30日まで続けられ、集まったものは大阪地裁に提出される予定です。

 安優香さんの無限の可能性を一方的な事故で奪っておきながら、果たして逸失利益60%カットという主張がまかり通るのか・・・。

 今後の裁判の行方に注目したいと思います。