加害者は持病の「てんかん」を隠していた

 事故は、2018年2月1日、安優香さんが通っていた大阪府立生野聴覚支援学校の前で発生しました。

 安優香さんは下校途中、同校の先生や友達と一緒に横断歩道の前で信号待ちをしていたところ、突然暴走してきたホイールローダーに至近距離から突っ込まれたのです。この事故で安優香さんは死亡、一緒にいた児童2人と教員2人も重傷を負いました。まさに、歩行者には避けようのない、一方的な被害事故でした。

事故当日の現場検証の様子を伝える産経新聞の報道(2018年2月2日付。井出さん提供)

 工事現場でホイールローダーを運転していた加害者の男(当時36)は、「難治てんかん」という脳の病気を持っていました。意識を失うような発作が起こる危険があったため、主治医からは車を運転しないよう注意されていたそうです。にもかかわらず、虚偽の申請をして免許証を取得。あろうことか、仕事で重機の運転を続けていたのです。

 努さんは語ります

「実は、加害者は今回の事件の前にも、数件におよぶ当て逃げや人身事故を起こしていました。それなのに、自らの持病と向き合わず重機を運転し続け、その結果、ただ信号待ちをしていただけの娘の命を奪ったのです」

 飲酒運転と同じく、てんかんを隠して運転する行為は極めて悪質とみなされます。「危険運転致死傷罪」で起訴された加害者に下された判決は、懲役7年の実刑でした(2019年3月)。

 大阪地裁の裁判官は、『本件事故時はてんかん発作で意識を喪失していた』と認定し、『てんかんの危険性を軽視していたと言わざるを得ず、厳しい非難に値する』判決文にそう明記しました。加害者は現在、刑務所に収監されています。