教育が子供を意固地にしちまう

——ヨット部にもなかったんですね。戸塚さんが体罰を使うようになったのが本当に不思議です。

 体罰のええのはね、やられたやつにだけ効くんやないこと。他のやつにも効くんよ。

 基本的に一番ダメなやつがやられるわけやから、他のやつは『次は俺だ』って気がするよね。

——戸塚さんは著書『本能の力』の中で「尻や腿などの筋肉の厚い部分を叩きます。生徒にダメージを与えることが目的ではなく、その場限りの衝撃、痛みを求めているわけです」と書いていますね。一方、ドキュメンタリー映画『平成ジレンマ』の中では子供の顔を蹴り上げる場面が映っています。どう加減しているんですか?

 まずね、目的を考えなきゃいかん。体罰は『恥をかかせる』ということを目的にせないかん。

 論語に『恥有りて且つ格る』という言葉がある。恥が人間を進歩させる、という意味。体罰をやられたやつが進歩するわけね。

 それをまず目的にしようよと。体罰をやる方は、頭の中で『進歩だ、進歩だ』と言いながらやる。そうしたら、ちょうどええ体罰になるから。

 ただね、体罰を受けないで育ち、わがままいっぱいの生意気なやつらはね、頭が凝り固まってるもんで体罰を少々やっても効かんのや。体罰が悪いと教え込まれとるやつは、自分が悪いとは思えないから余計に効かん。

 お前が悪いから体罰をやるんやでということを、納得するまでせないかん。

——昔は体罰を少しやれば効いたのが、だんだん効かなくなってエスカレートしていった?

 やる量が増え、だんだんきつくやらんといけなくなった。今は弱い人間が多いからね。じーっとしとりゃなんとかなる、嫌なことがすぎていくと思ってるんやね。そいつを動かさなきゃいかんわけや。

 ヨットに乗れといっても、風が強いときは怖くて怖くてしょうがないんだ。ウインドサーフィンほど怖いスポーツはないよ。だからみんな絶対に嫌、絶対にやらないよと頑張るわけや。

 そいつを乗せないかんのやから。放り投げても、ひっぱたいても、とにかく乗せるんや。そこがなかなか難しいんよ。乗ったらあとはしめたもので、あとはヨットが勝手にやってくれるからね。ヨットが自分と向き合わせてくれる。

 本来、頑固というのはええことなんやで。信念を守り抜く強さという意味でね。でも連中は悪い方向に使う。それは頑固やない、意固地っていうんや。

 今の教育はね、子供を意固地にしちまうん。とにかく意地を張っておれば、やらずにすむっていうのが今の教育よね。