(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
毎年のことだが、上場企業の株主総会が6月29日にピークとなった。だが、今年はいつもと様相が違っている。
ひとつは、アクティビストすなわち「物言う株主」の存在と影響力の変化だ。それは東芝の事例が端的に物語る。
そこに輪をかけるのが、いわば「環境アクティビスト」の台頭だ。気候変動問題、地球温暖化対策への取り組みを企業に求めて、株主提案をする。三菱UFJファイナンシャル・グループの株主総会では、株主のNGO団体から「パリ協定」の目的に沿った投融資の指標や経営戦略を策定、開示するように定款の変更を求められた。同議案は反対多数で否決されたが、それでも賛成票は23%に上っている。
ESGを蔑ろにする組織は生き残れない
こうした動きは海外で活発化している。5月26日の米石油大手エクソンモービルの総会で“環境派ファンド”と呼ばれる投資会社「エンジン・ナンバーワン」が環境対策の強化を迫り、取締役の刷新を求めて推薦した候補4人のうち3人が選任されたことは世界を驚かせた。
また、同日開催された米石油大手シェブロンの株主総会では、同社製品の使用によって発生する二酸化炭素排出量を削減する案が承認され、5月19日のJPモルガン・チェースの株主総会では、「パリ協定」を達成するための行動計画の公表を求める株主提案に、5割近い賛成票が集まったと報じられている。
こうした背景にあるのがESG投資の拡大だ。言うまでもなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を総合的に勘案した企業価値が見直され、安定的かつ長期的な成長のためには不可欠なものと評価される。裏を返せば、ESGに欠ける企業は、それだけリスクを抱えた存在であり、極論すればそうした企業組織はこれから生き残れないことを示唆している。