イスラエル軍の空爆で噴煙を上げるパレスチナのガザ地区(5月20日撮影、写真:ロイター/アフロ)

 イスラム原理主義組織ハマスは5月11日、パレスチナ自治区ガザ地区からイスラエルの都市テルアビブへ向けて130発のロケット攻撃を行った。

 ハマスは、「11日のロケット攻撃は10日にイスラエルが行った空爆への報復として行った」という声明を出している。

 イスラエルは、このロケット攻撃に対して空爆などで報復し、紛争は約2週間継続した。

 このガザ地区でのイスラエル・パレスチナ紛争は安全保障の観点で学ぶべきことが多い。

 本稿においては、この紛争においてイスラエルが行った戦いを分析することにより、AIの軍事利用を含む教訓について記述する。

壁の守護者作戦

 イスラエル国防軍(IDF)は、この紛争における軍事作戦を「壁の守護者作戦(Operation Guardian of the Walls)」と呼んでいるが、この作戦を観察するといくつかの特徴があることに気づく。

 第1の特徴は、イスラエルがこの紛争において、ロシアがクリミア半島を占領するために採用した「21世紀型ハイブリッド戦」を遂行したことだ。

 私は「ハイブリッド戦」を「全領域戦」と言い換えている。

「全領域戦」とは、すべての領域(陸・海・空・宇宙・サイバー・電磁波・情報・外交・経済などのあらゆる戦う空間のこと)を使用し、軍事的手段のみならず非軍事的手段(SNSや既存メディアの利用、外交、金融など)を活用した戦いのことだ。

 実際、IDFは空爆やミサイル攻撃のみならず情報戦、サイバー戦、電子戦、心理戦、宣伝戦などを総合的に行っている。