目と鼻の先に潜むロケット砲を抱えた兵士
途中、降りしきる雨で泥の川と化した道路と格闘しながら車を進めていると、突然前方で2、3本の大きな木が倒れて道路を塞いでいた。そして、木の枝の陰にイスラエルのメルカバ戦車がいた。車を降りて近づくと、我々の動きに砲身がピタリと照準を合わせてくる。
「ラファへ行くんだ。どうしたらいい?」
「ここは誰も通れない。引き返せ」
戦車兵は冷たく言い放った。仕方なく近くの民家の庭を突っ切り、迂回した。すると、土手の窪みに武装した兵士が6人、這いつくばっていた。ロケット砲を構えて先程の戦車を狙っているではないか。
アズミの押し殺したような「逃げろ!」の声で、その場をあわてて離れた。余談ではあるが、紛争地の日常だ。
到着した時にはラファの町はもう静まり返っていた。覆面をしたハマスの兵士たちが、仲間の殉教を讃えながら銃を打ち鳴らして行進したらしいが、すでにどこかへ引き揚げていた。
現場である難民居住区は、ここまでやるかと思うほど徹底的に壊されていた。ロケット弾で攻撃した後にブルドーザーまで出てきたという。近くの民家の老女が一部始終を見ていた。
「こんなことは珍しくもない。あいつらはここにハマスが逃げ込んだと言う。攻撃30分前に通告するのが、やつらのせめてもの情けだって」