ムハンマドという若者がPLOの悪口を始めた。
「俺は初め、PLOのファタファ(PLOの最大軍事組織)にいたんだが、PLOの幹部は腐っている。援助金の抜きとりや賄賂で幹部達だけが潤っている。悪さのし放題だ。イスラエルよりタチが悪い。その点、ハマスはきれいだ。だからシオニストとは決して妥協しない。アラファトはクソだ!」
そう言って彼は唇を大きく震わせてアラファトの真似をした。その顔に皆が笑った。
「いちばん強力な武器は体に爆弾を巻いた自爆テロ」
「ハマスにはどんな武器があるの?」
彼らの説明では、カラシニコフ自動小銃、RPGロケットランチャー、手榴弾、手製爆弾、火炎ビン、そして子供たちには石があるという。それだけではとてもイスラエル軍にまともに立ち向かえるとは思えないが・・・。
「いちばん強力な武器は体に巻いた爆弾さ。これにはユダヤ人も心底震え上がるぜ。体が粉々になるんだから」と一人が笑いながら言った。
事実、当時、西エルサレムでは自爆テロが頻発し、大通りを歩く人々も、レストランの客も、バスの乗客も、皆が恐ろしいほどピリピリと神経が張りつめていた。
しかし、テロはダメだろう・・・と、その時、彼らがこちらの反応を面白がっているのに気づいた。
「からかうな!」
そう返すと、また皆で笑った。インタビューを終え、若者達はびっしょりと濡れながら雨煙の中に吸い込まれて行った。彼らはあの時、確かに青春の真只中にいた。