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(文:広岡裕児)

着実に支持層を広げる極右「国民連合(RN)」。左派シンクタンクまでが、ルペンRN党首の大統領選当選の可能性を指摘し始めた――。

 フランスの大統領選挙まであと1年。4月11日付のフランスの『ジュルナル・デュ・ディマンシュ(JDD)』紙は、出馬候補を10パターンに仮定して大統領選に関する世論調査を発表した(内容は「フランス世論調査研究所:IFOP」の調査)。その結果は、いずれの仮定でも、第1回投票では現職のエマニュエル・マクロン氏(得票率23~28%)と極右政党「国民連合(RN)」党首のマリーヌ・ルペン氏(同25~27%)が伯仲している、というものだった。

 もっともフランスの大統領選挙は2回投票制で、第1回投票で過半数をとった候補がない場合には、上位の2名が残って2週間後の第2回投票で雌雄を決する。その第2回投票では、マクロン氏54%、ルペン氏46%という結果になった。この他、今年に入ってからのさまざまな世論調査はいずれも、ほぼ同じような結果である。

 これだけをみるとマクロン氏優勢、といいたいが、2017年選挙の第2回投票では、マクロン候補は66.10%を獲得しており、このときほどの優勢さはない。ちなみに、フランソワ・ミッテラン大統領が誕生した1981年選挙の1年前の世論調査では、ミッテラン氏は39%で、現職のヴァレリー・ジスカールデスタン氏が61%であった。ミッテラン氏は1年で逆転して当選したのである。

社会党系財団レポートの示す「当選シナリオ」

 そんな中、4月21日に「ジャン・ジョレス財団」が、ルペン氏勝利の可能性を示唆するレポートを出し、話題になった。

 同財団は、ミッテラン大統領のもとで最初の首相になった故ピエール・モロワ氏が理事長となって1992年に設立されたシンクタンクで、本来は「社会党」系であるが、現在ではマクロン与党の「共和国前進」にも近いとされている。

「最近、第2回投票ではマリーヌ・ルペンに投票してもいいと思っている左派支持層が多いと言われている。しかし、データを検討すると、この危惧はあたらない」と同レポートは述べ、危惧は、別のところにあると3つの要因を指摘する。すなわち、

(1)「共和党(LR)」などを支持する穏健右派層がルペン氏に流れる。
(2)RNが旧「国民戦線(FN)」時代の悪いイメージの払拭に成功する(「非悪魔化」)
(3)コアな支持層以外でマクロン大統領が嫌われてしまう

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