日本政府は承認前のモデルナワクチンを輸入した(写真:AP/アフロ)

 4月30日のNHKのお昼のニュースで、関西国際空港に米製薬会社モデルナのワクチンが到着したという報道があった。日本政府はモデルナと、9月までに5000万回分、人数にして2500万人分のワクチンを供給するという契約を結んでいる。ニュースでは、モデルナのワクチンはまだ日本で承認を得ていないこと、審査を迅速化する特別申請が認められていること、承認が取れ次第、東京と大阪で接種を開始すること──の3点が報じられていた。

 菅首相は4月16日の訪米時に、ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)と話し、前倒しで同社製のワクチンを供給してもらう約束を取り付けたと胸を張った。しかし、ファイザーに務める筆者の友人に聞いた話では、製造体制も配給体制も今のところ2カ月前に決めた予定は変わっていないという。

 一体、日本政府内では何が起こっているのだろうか。

 上述のNHKニュースからわかったことは、日本政府はファイザーだけでなく、モデルナのワクチンをあわせて日本人全員への接種をカバーしようとしている点だ。これは菅首相の訪米時の発言とは異なる。

 日本政府にはもともとモデルナ製のワクチンを輸入する計画があり、首脳会談ではファイザー製の供給を急いでもらうことを話題にしただけということかもしれない。モデルナは、3月5日の時点でワクチンの承認申請をしているが、ファイザー製を埋め合わせるために審査を急いでいるとの印象は拭えない。

 コロナ対応のために申請と審査を迅速化する必要性はある。ただ、承認前にワクチンを輸入するというのはいかがなものか。審査が通らなければ、送り返すのだろうか。仮に何か問題があったとしても、審査官が「No」と言うことはもはやできない。既に審査がほぼ終わっているというのであれば、結果を公表してから輸入すればいいだけだ。