将軍が御中臈(おちゅうろう)と御寝(おしずまり)の場合、あらかじめ指名が入る。それが当夜の当番ということになる。老女からその旨が当人に伝えられれば支度に入るのだ。

 まず入浴で身を清め、髪は崩して櫛巻(くしまき:束ねた髪を櫛に巻き付け頭頂部に留めるだけの簡単なもの)にして簪(かんざし)などは一切用いてはならない。

 当座は将軍が御成(おなり)になる1時間前に参入する。衣服は白無垢でなければならず御年寄から全身、至る処までをくまなく検査される。

大奥は戦後までどのような制度で何が行われていたのかは公にはされなかった

 小座敷には「御用(性交する妾)」と「御添寝(ただいるだけの妾)」の2人の御中臈(おちゅうろう)が待機。

 夜、10時になると将軍は小座敷へと出かけることになり、将軍の通る「お鈴廊下」では鈴を鳴らして御成が知らされる。

 この鈴の鳴っている間、各部屋にいる御女中たちは一切部屋から出ることが禁じられ、廊下の途中にいる者は、その場に平伏して顔を隠さなければならない。 

 いよいよ廊下の鈴が鳴り将軍がやって来る。

 御用(性交する妾)の中臈は将軍の右に並んで寝るが、もうひとり御添寝(ただいるだけの妾)の中臈が同じ座敷の将軍の左側に後ろ向きに寝る。

 けっして将軍の方を向いてはならず、口をきいてはならなかった。

 御添寝の役目は、御用の中臈と将軍の寝物語や性合場面の発端から結末まで一切の行動を観察し、翌朝、老女に報告しなければならず眠ることは許されない。