数学は、実際に手を動かして演習しないと、指くわえているだけでは永遠に身につかない。
この演習を担当するアシスタントで、問題の大半は私が作りますが、一部は「出題から考えてごらん」と裁量を提供します。
この場合は、解答案も各種、自分で作る必要があり、実際に下級生たちと一緒に考えると、教える方がかなり身につきます。
そういう「TA」代用教員を、学部3年生が務めて、学部1、2年生と一緒に「教え、教えられ」ながら伸びている。本学以前、旧制高校旧制大学以来の、非常にオーソドックスな伝統です。
1年次からの付き合いの彼は、そろそろまる3年になりますが、率直に最初はあまり指導が得意ではなかった。
それが、飛躍的といってよい進歩を現在進行形で見せている。
今後、彼は今教えているような教養の内容で「大学院入試」を受けるでしょうが、心配するようなことは何もありません。
これは30数年前、もし自分自身が物理学科3年のときこういう経験をしていたら、その先良かっただろうな、という最良のケースを彼に提供しているつもりで、与えているのです。
後輩の面倒を見るTAを経験することで、本人が著しく伸びるのが普通です。
一般に教室で一番勉強してきているのは、黒板にお尻を向けている側の人間と決まっています(コロナでこの比喩が使いにくくなりました・・・)。
23年前に東大に任官した直後から、こんなふうに代用教員「教育助手バイト」を重視しているのには理由があります。
私自身、そうやって伸びた自覚があるから。でもそれは、大学院以降でした。
私は「東大生時代」正確には1年次から大学院修士1年まで「時給2万円」の受験指導バイトをしていました。しかし、修士2年の春にすべてをすっぱりやめました。
直接の理由は「出光音楽賞」を貰ったからです。