いたずらな難問奇問は、試験としては不適切なものにすぎません。

「出題者の立場に立つ」そして「採点者の観点から、秀才をきちんと演じて見せる」

 これができるようになると、いきなり人が変わったように、水を得た魚のように伸びていきます。

東大の人材育成:下級生を指導する代用教員の伝統

 次に、そのような人材を育てる、東京大学に延々と伝わる指導の極意をお教えしましょう。

 それは「1段階下の学生を指導させて、可能なら問題・解答も自作して学生に実施してみる(教育助手の体験)」というものです。まず一般の例でお話しましょう。

 大学受験を控えた高校生は、余裕がある時期なら中学生とか、あるいは高3が高2、高2が高1の問題を作って、実際に出題して、後輩を指導させてみると、飛躍的に伸びる場合があります。

 まあ、1学年下とかではなく、余裕をもって見られる距離、例えば「高校生が小学生の中学受験を指導してみる」みたいなのが効果的と思います(私が高校時代、最初に体験した<アルバイト>がこれでした)。

 これは現在でも大学のなかで日常的に繰り返される、かつての「代用教員」以来の伝統的なシステムでもあります。

 私の担当する講義の実例でお話しましょう。

 東京大学理学部物理学科3年に在学するH君、20歳。

 彼は現在、同じ東京大学の教養学部、つまり1、2年向け開講されている授業の「演習」担当としてTA(ティーチング・アシスタント)=教育助手を務めています。

 教える内容は、私の担当する「文理共通、AIのための数学」を扱うコマの演習。

 これは文系の学生、つまり高校で数ⅡBを学び数Ⅲの準備がない生徒を前提に、世の中に出て金融、証券などで戦って行けるAI・機械学習の基礎を理解できるようにするわけです。