「森会長」が2月12日に辞意を表明すると報じられていた2月11日に本稿を記し始めました。
森氏は「相談役」に退き、後任は川淵三郎氏が就任するという報道時点で入稿したのですが、2月12日午後の時点で、実質的に「森会長が後任を指名」し、相談役留任など誰も聞いておらず、五輪正規の手続きを踏んでいないとして川淵人事は白紙。
2021東京五輪は本格的にダッチロールし始め、ネットでは「五輪開催不要論」が勢いを増しはじめました。そのうち「五輪開催有害論」に拡大する可能性もあるでしょう。
以下では、校正の追記を含め、川淵人事がリークされた段階での稿もあえて残し、あるべき五輪人事(中止するにせよ会長職は必要ですから)の性格を考えてみましょう。
川淵氏は、実は森氏と同年齢で現状では1歳上、国内向けの重石としては、年齢と恰幅はあるように見えます。
しかし、サッカー選手から監督、Jリーグの初代チェアマンと進んだ川淵氏と、まがりなりにも内閣総理大臣を務めた森氏とでは、国際社会での貫目が全く違う。
森氏なら直接電話もできた各国元首級のカウンターパートに、川淵さんではおよそアクセスできる保証はない。そう過不足なく見ておく必要があるでしょう。
例えば、川淵さんがロシアのウラジーミル・プーチン大統領に電話できますか。したとして、相手がとってくれますか?
だから政権サイドは必死で「森会長」を慰留した。しかし、それでは収まりのつかない四面楚歌が、国内からも海外からも相次いだ。
率直に言って、川淵さんという人選は、国内向けの事態収拾と思います。
国際社会に向けてという意味であるなら、「選手村村長」の元アスリートではなく、国内にまだ何人も生存している内閣総理大臣経験者の元議員など、器量のある人材のストックはあるはずです。
鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦、あるいは村山富市といった選択肢はないにしろ、また、小泉純一郎、福田康夫というような人からは断られた可能性も高いと思いますが、細川護熙あたりの人材を担ぎ出すウルトラCはなかったのかな、などとは思いました。
ガバナンスという観点からは、それくらいの曲芸はあり得ないことではないでしょう。